新 お気楽日記

日常を徒然なるままに。

ムダとユトリの違いって

自作の訂正図面を持ち込み始めた私たちに設計A氏、営業I氏ともに「お、こいつ本気になりはじめたな」と思ったかどうか確かめる術はありません。でも今までの私たちの曖昧模糊とした希望を広い心で受け止め続けていた彼らはちょっとこの辺から雰囲気が変わりました。念のため言っておきますが、雰囲気が変わったんです。態度が変わったのとはちょっと違います。要するに、こちらが本気になったのが「うれしい♪」というような雰囲気が滲んでいたように私は思うのですが。これも主観ですのでなんとも。

結局このときいんちきな寸法で引かれた私の図面を彼はきれいに整理しなおし、びみょーに変なところをプロの技で解決してくれました。どうにも貧乏人な私たちはついついムダと思しきスペースを埋めることに没頭していたのです。「この廊下ムダじゃない?」なんてことを思うのです。書庫の扉に辿り着くための廊下。ほんの半間だけどその扉を手前にしたら?とか、子供部屋の前の階段ホール「幅が広くない?」と中途半端に45センチ広くなったそのスペースを埋めるべく子供部屋を広げたり。
だけどこれって逆にムダなんですねえ。部屋のカタチを変形させてほんの少し広げたところで、家具は置きにくくなる、でこぼこした壁になり当然柱の数も増える。これでは単純に同じ建築面積でも坪単価があがってしまう。そしてむしろ使いにくい部屋になってしまう。「自分でもなんだか変だなあとは思ったんですよね」と言う私にA氏はやんわりと設計のいろはを伝授。これは「ムダ」とは違いますと…。それなら手前の廊下をほんの少し広げて階段ホールを広くして、そのスペースに地袋収納を作った方が…なんて言いながらささっと線をひくとこれがびっくり、「あれ?なんだか素敵かも?」という雰囲気になってくるんですね。「ああこれがプロの仕事だ」と初めて(失礼)彼の手腕を見た気がしました。飾り棚なんてムダ、おしゃれな穴の開いた仕切り壁面なんてムダ…とムダを排除することしか考えられなかったtheビンボーズの夫婦は、彼の引くおしゃれな間取りにちょっと抵抗があったんですが、このムダじゃないムダ作りにちょっと目がハートになりました。
「せっかく注文建築なんですから、ムダはいけませんがユトリは欲しいですよね」とA氏。おおお名言だ。つまり私たちのような発想で建築面積を小さくしてローコストな家を建てようと思ってしまうと、「建売住宅と同じになってしまいますね」と。そうなんですよね。建売住宅にはそういう魅力があるんです。ムダを省いたローコストな家。どうやら私、週末に入ってくるそういうチラシを熟読しすぎていたようです(笑)。
工夫次第で同じコストで少し広い家が建てられたり、その分ちょっと贅沢気分が味わえたりするのが注文建築の面白さらしい…と気づいたのはこのときでした。もちろんお金がいっぱいある人はそれを使って本当に贅沢な家を建てられるのでそんなこと考えなくていいんですが。
そんなわけで少しここで少し2階の間取りに手を加えました。夫の書庫と寝室を隣同士にして、入り口はひとつ。入ってから右と左に分かれるスタイルに。これでいいのかなあ?と悩む私に「寝室というのはご夫婦しか入りませんから、奥さんがよければそれでいいんですよ」とA氏。またもここで私はハッとさせられます。あーそっか、私いったい誰のための家を建てようとしているんだろう?と。こんな間取り「変?」とか書庫と寝室が続き間なのは「みっともない?」なんて心のどこかで思っていたんですよ。誰が住むのでもない私たちの家なのに。どーも頭が固くていけません。自分たちが良ければ良いという基本を忘れておりました。
ついでにトイレの位置をお風呂の側に…とかパズルのように組み替えて…。その場でかなり綿密な図面を引いてもらい、そこそこ満足…。


数日後またそれが届きます。そしてその直後珍しく設計A氏から電話が…。「いかがでしょうか?」と。ここで私たちは「おや?」と思います。どうしたんだろう?なぜか夫は電話で変更したい部分を根掘り葉掘り聞かれております。一応問題点がないわけではなかったので、あれこれ答えるとあちらはプロですからその場で「ではこうしたら?」と提案をくれるのです。でも電話だからこっちはあんまりピンとこない。その横で私と父は二人で「つまりこの階段を右に折れるんじゃなく、左に折れるかたちにすればすべてがすっきり行くんだよ」と実は結論を出していたんですね。なのに夫は横で「ええと、洗面所がですねえ〜」とわけのわかんない素人注文を繰り出す。
電話を切ったときにはあっちとこっちで違う図面が引きあがるという妙なことに。つまり次の打ち合わせまでにそれを直しておこうという心積もりらしい…。

こりゃあっちも本気で追い込みに入ったな…と思う一方で、そんなに急がなくてもココで建て替えようって気持ちになってるのになあ〜と不思議な気分。まあいいや、こっちはこっちで階段逆向き案を考えたことだし、またこれを図面にして持参しよう〜とのんびりな私たち。父は父で隣で「ああもうこの変更で決定だな!いよいよだな!おお決定だ!」と少々浮かれ気分。

さあそれぞれの思惑はいかなることか…てなもんで、これが12月も真ん中過ぎたぐらい。ここから事態は急展開〜をむかえるのでした。