新 お気楽日記

日常を徒然なるままに。

回顧録

昔マンガ雑誌の編集をやっていた頃、ええとまだ二十代前半で思いっきりペーペーだった頃。なんか理不尽だなーって思うことがよくありました。
あのよくドラマとかにあるような「先生〜もうあと1時間しか時間がないんですよ〜」って時計とにらめっこしながら廊下で待つ…みたいなのに近いことはしょっちゅうで。待ってるだけじゃラチあかないんでケシゴムかけたりホワイトかけたり…テクのある人だとトーンとかも手伝っちゃったりするわけですが。私は思いっきりペーペーなので怖くてそこまで手を出せずに、しょうがなく台所の洗物したりゴミ出ししたり、差し入れ買ってきたり。それが結局徹夜で何日も続いたりということもアリ。でも編集さんは一人のマンガ家さんだけを担当してるわけじゃないんで、その間にあっちいったりこっちいったりやってるわけで。
でね、結局締め切りオーバーして、編集さんはベタもろくに塗ってない原稿奪い取ってタクシーで印刷所へ向かったりってなことを本当にやってるわけなんですが、そんなときでも「ああーもう!こんなに遅くなちゃったよー!眠いよー!疲れたよー!もう嫌だー!」って思いながらも、「ああでも先生間に合ってくれてありがとう!感謝感謝!」ってすっごい感謝しちゃうんですよ。「ありがたや〜」って。頑張って欲しいから「原稿終わったら飲みましょうね!」なんて言って、経費でじゃんじゃんもてなしちゃったりして。
で、一方で本当にきちっとしたマンガ家さんっていうのもいて、そういう方は締め切りの二日前くらいとかにきっちり宅急便で送ってくれたりするわけです。家までいくまでもない…という。そういう方にはお電話で「ありがとうございましたー!」って言って、それっきり。

なんかそれっておかしくない?ってあるときハタと気付きました。

だってだっておかしいでしょう?
計画的に、こちらからは見えないところでもしっかりやって、完璧に出来上がったものを届けてくれる作家さんには電話一本で「ありがとうございます」。で、差し入れ山ほどして、お手伝いもして、家の掃除もして、宥めたり励ましたりして、それでも締め切りすぎてて印刷屋さんに迷惑かけて、こっちも身体ボロボロで。そういう人が編集部中から「間に合ってよかった〜ありがとう〜」って言われて、しかも修羅場を潜り抜けた同志みたいになっちゃって。で、そういう人は次の時にもやっぱりいっぱい差し入れ貰うわけだ。
おかしいおかしいおかしいっ!人として「どうなの?」っていう人がとっても感謝されてもてなされるなんて!

って、思ったらなんだか急に自分のやっていることが人でなしのような気がしてねえ。なるべくキチンとした方にはキチンと対応しようと…そっちの人にこそ誠意を持って心から対応しようと…でもやっぱり当時は目先の忙しさにかまけてダメだった気がします。やっぱ人でなし。

で、今になって自分が曲がりなりにも原稿提出側になってみて、それを思い出すわけです。やっぱり締め切りは守らなくちゃいけないよなーって。お陰でほとんど問題なく締め切りを守れる人間になりましたが、でもやっぱり逆に編集さんの態度は見ちゃう。きちんと提出している人に対して「受け取りました」のメールもないノーリアクションな編集さんなんかはそれだけでちょっと見る目が変わっちゃう(最近そういう人多いんですよっ)。きっとあの頃の自分もそういう目で見極められていたんでしょうねえ(怖っ)。

最近そういう関係でカチンとくる出来事が多くてねえ。編集さんの態度が横柄だと、いっそイジワルして遅らせて困らせてやろうか?なんてすっごい悪いことも考えてしまうんですが、最後の最後で踏みとどまって期日を守ってしまうのは、フリーの弱さと、あの頃の経験故だと思います…。ええ、辛かったけどいい経験だったなと。

こういう思い出話するのって年取った証拠っすかね…。