新 お気楽日記

日常を徒然なるままに。

噂の男の感想

結局いろいろ考えつつ、感想文。いやー感想の書きにくい舞台だったなあ。でも好きか嫌いかといわれれば間違いなく好き。
以下ネタバレてんこ盛りです。ご注意ください。
因みに面倒くさいのであらすじには触れてません。

なんと言うか、いやーな男たちのいやーなお話で、ってそのまんまじゃんって感じですが、本当にそんな感じで、物凄く後味は悪いです。漫才ネタのところ(中川家が書いたんだって!)とか、コネタとかお腹が捩れるくらい笑えるんだけど、そのうち笑っていることに罪悪感さえ湧いてきます。
無意味なほど人が死ぬし、暴力とかセックスとかあるわけです。で、それらはボイラー室で行われていて、演芸場の舞台のほうからは観客の笑い声が聞こえてくるわけです。「ほら、こんなことが起きてるのに皆笑ってるよ」って、言われるとぞぞ〜っときます。
この無意味なほどのアレコレですが、正直なところ終わって考えてみて「あれ?」っていう感じがあるんですよ。辻褄ちゃんとあってんのか?というような感覚。一個一個検証すればいいのかもしれないけど、する気も起きないくらい後味悪いし(笑)。あの人がこの人を恨んでて、でこの人はあっちの人を愛してて。みたいなのが順繰りにキレイに繋がっていればいいんでしょうけどね。そういうもんでもないみたい。
殺すほどのことかよ?とか死ぬ必要はなかっただろ?とか。いちいち引っかかっちゃう。
でも思えばこの頃現実社会で起きる陰惨な事件とかって、そういうのが多い。動機がいまいちしっくりこなかったり、逮捕されても理解しきれなかったり。精神鑑定に持っていって納得…みたいなのが多いけどホントのところはよくわかんない。
って思うと、この芝居はこれが狙いか!という気もしてくる。人が何かやらかしてしまうのって、そんなしっかりと説明できるものではないのかも…とか。いや、そういうのがあったとしても所詮他人にはわかんないのかも…とか。そんなところには気づかずに、毎日アホみたいに私たちは笑ってるのかもって。


そんなわけでして、堺さん。
この5人の中でこの役というのは本当にぴったり過ぎて怖い〜。12年前、出来損ない新人マネージャーの鈴木くん。愛するアキラ(橋本さとし)には優しくかばわれているようで「ホモホモ」と連呼され気持ち悪がられているし、モッシャン(橋本じゅん)にはSMちっくにいたぶられているし。これがまた無抵抗に、寧ろちょっとそっちの気もあるのか?というぐらいに嬉しそうにヤラレまくり。縛られて脱がされて、ライトで照らされて、タバコの火押し付けられて、写真撮られそうになって…。うひゃ、ごちそうさま〜って感じ(じゅる)。遊び心のある大人の女性にとってはこんな素敵な遊びはないんですが(笑)。なんか意味が違ってきてる?それにしても相変わらず洗濯板のような胸。白〜い肌。細〜い足。
ボンちゃん(山内圭哉)との濃厚なキスシーンもあるしねー(笑)。でもさ、こういうシーンに色気がまったく感じられないってのが堺さんの特徴だよね(欠点とは決して言わない強力なファンフィルター・笑)。愛のないキスだからそれでもいいのか?と納得しそうになるけど、でももうちょっと妖しさがあってもいいじゃん!ねえ?

とりあえず現在の鈴木くんは劇場支配人なんで、スーツに身を固めオールバック。あの妙に通る声がいかにも「支配人!」って感じ(←頭悪そうな感想文だ)。ホモ視線をぼんちゃんに送る姿は凛々しくて素敵だったわ〜(笑)。普通に男前な鈴木支配人の過去があのオドオド鈴木くんていうのがいいよねー。でもやっぱりいたぶられ系鈴木くんの方がいいな。
きっとそう思うのは、容貌だけじゃなく、あの頃の彼は彼なりに一生懸命だったからなんだ。彼なりに一生懸命頑張っている姿だったから、繋がれてても脱がされてても良かったんだ(そこに拘る・笑)。モッシャンにどんなにいじめられてても。その彼の心を結局捻じ曲げたのはモッシャンそのものではなくて、好きだったはずのアキラ。優しそうな顔を向けておいて、彼のハムスターを殺してしまう男。12年の歳月の後、それを知らされても信じない鈴木さん。挙句の果てには人殺し。

おお、いつのまにか話が戻ってる。
つまりはそういういろんなものが絡み合ってて、わかり易いはずなのにわかりにくくて、すっごく後味が悪い割には面白い舞台だったのです。
兎も角「喜怒哀楽すべての感情を笑顔で表現する男(←うろ覚え)」と言われてこの日一番の笑いをドカンとさらって行った堺さんでした。鈴木くんも、そういう子だったんだよね。うん。

そして最後に書いておかねばなるまい。ボイラーマンの八嶋智人さん。凄い。凄いぞー。前半の笑いを牽引していったのは彼でしょう。なんかあの間合い、あの口調。何もかもが面白すぎた。ついでに彼のキレっぷりは本当に怖かった…。すごい役者さんだ。