新 お気楽日記

日常を徒然なるままに。

青い文学 人間失格 第二話お化け

第二話は、心中しそこなって自分だけ助かってしまったところから。主人公である葉蔵は世間と上手く距離をとることのできなかった幼いころを思い出す回想が主。他人が恐いという葉蔵は、道化を装い、作り笑いで世間と折り合いをつけて行くことを覚えていたという。このとき、父親をはじめとする家族とも上手く付き合えない己を表現したのが一枚の写真。皆すました顔をしている家族写真の中で、葉蔵一人がニッカリとした作り笑顔。これが、冒頭でナビゲーターである堺さんが紹介した太宰自身の家族写真とダブる作りで、なんだか胸が締め付けられて息苦しい感じになります。


ストーリー的には、そうした子供の頃に自分のことを「お化け」と呼んだ友人が一人いたところから。恐らく友人と呼べるのはその一人だけで、彼は葉蔵の内面を見抜いたからこそ「お化け」と呼んだのでしょうが…。心中に失敗して死にそこなった彼は、そんなことを思い出して目の前に現れたお化けの幻というカタチの自分自身と対峙していくことになるという…かなり抽象的で掴みにくお話。


それだけに堺さんの見せ場も…うーん(笑)。冒頭のナビゲーターとしての台詞が一番の見せ場かも(笑)。


いや、寧ろ葉蔵に声がはまりすぎていて、さらっと聞けてしまうので、もしかしたら「おお!」という部分があったのかもしれないけど、呻きも叫びもつぶやきも自然過ぎて印象に…残ってない…。そうなんですよねえ。今回台詞が、お化けと対峙していく上での叫びだったり、過去を思い出しての呻きだったり、あまり人とまともに会話するという部分がないのです。
唯一、それらしく感じられたのが、病院で意識が回復しベッドの上で警察の取り調べを受けるところ(心中じゃなくて他殺の疑いもあるわけですね)。死んだ彼女との馴れ初めなどを問われて、特高に追いかけられて彼女のスカートの中に隠れた話などを淡々とするところが、感情を失った人のようで逆に耳に残ります。スカートの中に顔を埋めたときどんなだった?なんていう印象まで突っ込んで聞かれるんですねえ(笑)。で、それに対しても淡々と「いい匂いがしました。今までに嗅いだ事のない官能的な…それで心中しようと思ったんです」などと。
これについては悪知恵の働く仲間に「こう言えば心中ってことになる」と言い含められてそのまま機械的に喋っているようにも思えるし、「どうせ説明しても心中したくなった気持ちなんて伝わらない」と思って自ら教科書的に答えたのか…そのへんもちょっと気になる感じですが、淡々としている分だけちょっと色気を感じたりして(笑)。
思えば実際前回スカートの中に隠れているとき、もう出ても大丈夫って言ってんのになかなか出てこなかったんだよなー(笑)。


そんなこんなであれやらこれやらしているうちに(←ものすごく端折った)、彼はお化けと決別して人間らしく生きようと、軟禁状態の部屋を脱出。ついてくるお化けを気にしつつもふらふらと…そして出会い手を差し伸べてくれたのが、編集者として女手一つで幼い娘を育てている女性。「うちも人間以下の暮らしだけど良かったら来る?」という言葉にふらりとついていく。そう言えば、子供の頃葉蔵をお化け呼ばわりした友達が言っていたのは「きみは優しいから女にもてるよ」だった。男の目から見ても「イイオトコ」と表現されているしねえ…。年上のわけありっぽい女性にもてるオトコって…なんとなくわかるよな…母性本能をくすぐるタイプっていうのかしら。なんとなくそういう雰囲気を醸し出すのが上手い堺さんっつのも、悪くないかも(笑)。