新 お気楽日記

日常を徒然なるままに。

カツオの難

オトコの料理は基本、褒めてあげなくちゃならない…これ結構大変です。
私の父は、料理と言えば手巻き寿司か豚の生姜焼き。この2種類。時折これが同時に出てきたりしてびっくりします。手巻き寿司は寿司飯以外は料理というほどのもんじゃないので、お金さえ掛ければ美味しくできますね。問題ありません!しかし、生姜焼きは何度作っても家族に不評。だって塩辛いんだもん。生姜たっぷりにお醤油もたっぷり。お肉の表面が照り焼き状態になるほどの色ツヤ。ただでさえ濃厚な自作タレに相当な時間漬け込んでいるようで、しかも最後は大量のタレで煮詰めたような状態に。一番ひどかった時は、白い御飯があろうとも千切りキャベツが山ほどあろうとも1切れ以上食べられない(笑)。お湯で洗おうかと思ったくらい。
さすがにそこまでいくと本人もヤバイとは思っているハズ…なんですが、とにかく失敗を認めません。「そんなに塩辛いか?ちょうど良いぞ」と、やせ我慢をしながらパクパク一人で食べます。死ぬからヤメレ…と思うんですが、言えば言うほどむきになって「お前たちはちょっと反応が過剰すぎるんだっ!」とか言ってこっちが貧乏舌だと言わんばかり。母など呆れかえって「食べれたもんじゃないわ!」と、箸を置いて怒る。それはそれで、作ってもらっておいてそりゃーない…という感じでして、娘としては「次回はタレの分量半分くらいにしてもいいんじゃない?あとはお酒とかを入れて薄めるとか?」なんてアドバイスを装ったダメ出しをするしかないんですが、聞き入れないのもまた同じことを毎回繰り返す原因に。



前ふりが長くなりましたが(前ふりだったのか)、今日はそんな父が新作に挑戦しました。
その名も、カツオの生姜焼き(涙)。
別に今日は作ってくれとか、手伝えとか言ったわけではありません。母は今日、いわゆるデパ地下のちょっと高級なお魚屋さんでカツオを二柵ほど買ってきたのです。見るからに鮮度も良くて美味しそうなお刺身♪と、私も楽しみに実家へご相伴にあずかりに行ったわけですが、唐突に父が台所に乱入。刺身があれば何もいらない漁師町育ちのくせに「お。カツオかあ〜。じゃあ半分生姜焼きにしてやる!」と機嫌よく腕まくり。生姜焼きって、あの生姜焼きとは違うよな…とびびる私を尻目に一柵を通常通りにカット。「テレビでやってた」言い、止める母を振り切ってフライパンを熱する…怖いのでその先は見ないことに(笑)。
はてさて食卓に並んだのは、もはや肉なのか魚なのかもわからない、生姜とお醤油にまみれてテラテラと茶黒く輝く物体。完全にあの生姜焼きのカツオ版でした。
まず自分で一口食べる父。「どおなの?」と皆に聞かれて「うん。まあ。食べてみろ」と答えるあたり、ぶっちゃけ失敗だと思ったんだろー!と突っ込んだらきっと機嫌が悪くなるので、とりあえず黙って一切れいただきましたが…。これはないっ。やってはいけないことだ。魚への冒涜だ。こりゃカツオの逆襲に遭うぞ!というシロモノ。
あまりの味の濃さに閉口してると、「これなら一切れで御飯がお茶碗一杯食べられるだろう!」と。そんな…おかずがなくて困ってるときなら兎も角の話を偉そうにされても…。本日は一人5切れ以上ありますって。
しかも芯までパッサパサになるくらいにウエルダン(笑)。なんとかさり気なくアドバイスを投じてみようと「せめてレアだったらねえ」と言う私に「こういうふうにテレビでは作ってたんだ!」とキレ気味。ホントかよ(笑)。
「でもこれ、スーパーじゃなくて、デパートの高級鮮魚店で買った高いカツオだったんだよねえ」と言うとさすがに己のやったことの罪深さに気づいたらしく、「あ?そうだったの?」とな。「鮮度もわからんかったんかいっ!漁師町育ちが聞いて呆れるわ!このボケ!カツオの大群に襲われる夢でも見てうなされろ!」などとは言えず、「私は二度は食べたいとは思わないです。お刺身が好きです」と丁重にハッキリと意思表示しておきました。


ええ、なんかウチの夫とそっくりなんです。ど素人のくせに変に気まぐれにオリジナルな創意工夫しちゃうの。そして褒めないと機嫌悪くなる。いくつになったらこの人たちは大人になってくれるんでしょう。褒められるために料理をする…そこが既に本末転倒なんだってば。