新 お気楽日記

日常を徒然なるままに。

しゃべれどもしゃべれども

かねてから観たい観たいと思っていた映画。先週観にいけなかった映画館のタイムスケジュールが今週はモーニングショーとレイトショーに変わっていたので、本日はさくさくっと観に行ってきました。平日の朝なのにちょこちょこ人がいて、全体に一人でふらりと来たような高齢の方が多かったですけど、小学生ぐらいの親子連れさんもいてなんだか客席もいい雰囲気。

あちらこちらで「太一くんの落語はいい」と耳にしていたんですが、本当によかったですね〜。何がよかったかって、ストーリー展開上、序盤は二つ目程度の上手さはあるのだけれども、それは師匠のコピー版にしかなっていなくて、客をひきつけられるほどではないという下手さ。その下手さ加減がなんだかよかった。師匠に稽古つけてもらっている様子も、一生懸命なんだけれども観ている素人の私まで「ああもう!そんなんじゃ師匠に怒られるよっ」と言いたくなる様な様子。しかも観ながら「上手いのになんで面白く感じられないのかなあ〜」って本気で私まで考えたくなってしまう感じ。
それでいて一門会のときは本当にふっきれたように面白くて「うわ、この落語最初から最後までちゃんと聞きたいなあ」って思える上手さ。やりながら本人がのっていってる感じが伝わってくるんですねえ。本気で聞いてみたいな太一くんの「火焔太鼓」。

ストーリー的には特別な事件がおきるわけでも、夢のような展開があるわけでもなく、予測がつくっちゃつく流れなんですが、そこがまたいい。なんでもない日常の中にどれだけのことが詰まっているのかってのがしみじみと流れ出てくる感じ。皆それなりに悩んでて、それなりに一生懸命で、それなりにやぶれかぶれで、それなりの道を見つけていく。本当はそういうところに人生の大事な部分がぎゅっと入っているのかな?と思う。

タイトルはしゃべれども〜だけど、不器用で喋れない人々を見ていると、案外喋れないのはいいことかもしれないとも思います。簡単に口にしないからこそ、伝わる思いというのもありますね。噺家ですら、本当に言いたいことは上手く伝えられなかったりするわけで。

師匠役の伊東四朗さんと、おばあちゃん役の八千草薫さんがとっても素敵。東京の下町って本当にいいなあと思える人々と映像。今の映像なのにね、素敵なんですよね。浅草寺とか、隅田川とか。今とちょっと昔の日本がほどよくブレンドされた感じ。馴染みのある風景ゆえに余計にそういうことを思うのかもしれないけれども、私日本人で良かったなあ〜って漠然と思えるお話でした。

余談ですが、太一くんちの照明器具がやけに気になりました(笑)。いい!これこれ!この感じですよ!玄関照明!