新 お気楽日記

日常を徒然なるままに。

甲次郎浪華始末

先日もちらりと書いた築山さんの作品。シリーズとりあえず5冊。

蔵屋敷の遣い―甲次郎浪華始末 (双葉文庫)

蔵屋敷の遣い―甲次郎浪華始末 (双葉文庫)

残照の渡しだ甲次郎浪華始末 (双葉文庫) 雨宿り恋情―甲次郎浪華始末 (双葉文庫) 迷い雲―甲次郎浪華始末 (双葉文庫) 巡る風―甲次郎浪華始末 (双葉文庫)

珍しく5巻で一応一部完結とされている作品です。
この方の書かれる作品は設定にポイントがあると思うのですが、このシリーズの場合主人公の甲次郎の出生の秘密にあります。大坂のとある大して大きくもない商家の跡取りなのですが、実は彼はとある大名の御落胤だという、スケールがでっかいんだかちっちゃいんだかというところがミソです。商家に養子として入っていて、その家の病弱な娘さんの許婚。でもその娘さんは甲次郎の親友である同心に惚れて惚れられて、でもってわけあって長らく同居状態にある娘さんと甲次郎がまた惹いて惹かれての間柄…と、私の貧困なボキャブラリーで説明すると大変昼メロちっくな感じがしますが、別にそういう話じゃありません。
事件が起きてそれを甲次郎と親友同心祥吾が解決していく…どうもその事件が、あっちこっちで甲次郎の実の父親大坂城代と絡んでいたり、かわいらしい娘さんたちが巻き込まれたりというやっぱりスケールが大きいのか小さいのかわかんない捕物帖です。

前回「寸止め感がええ!」と言った私ですが、こちらのシリーズある意味寸止めしてない感じ。結構親切にあれこれと結論を出してくれており、男女4人の悲喜交々も言葉で説明されています。うーん。恐らく昼メロちっくなごたごた部分をきっちり誤解のないように説明するというのが、そういう形に表れたのかと思いますが、寸止め大好き派としてはちと勿体無い気がしてしまう。「う!そこまで言うな。言わぬが華」というような。私好みの「ああーいいところでば面切り替わるー!」みたいなのは少ないです。5巻まで引っ張って一応の終結をみていることもあって、毎回の捕物に関わらない人間関係や過去のことがちょっと途中で変化をしているのもちと勿体無い。最初の引き込み(え?なになに?どういうことー?って興味をそそられる部分)が深いだけに「あれ。丸くおさまっちったよ」という感じです。

でもそれを差っぴいても十分魅力的。今回は「大坂は町人の町」ってテーマと別にそんな町での「武士と町人の関係」ってのもテーマになってます。

因みに前回書いた一文字屋紅実シリーズだと、お紅実がかつて大坂を騒がせさせた悪のヒーロー大盗賊団猿飛一味の中の一人の娘ってところが「なんだかスケール大きそう」という設定ポイント。ずっと前に書いた緒方洪庵浪華の事件帖シリーズだと千年の歴史を持つ在天楽人、東儀左近将監がすっごい可愛い娘さんなんだけどめっちゃ強くて男装して大坂の町を裏側から助け守るというのが「かなりスケールでかいぞ」というポイント。しかも若かりし日の緒方洪庵に惚れられるという。寸止め感では緒方洪庵のシリーズが一番かも。

またも読書感想文らしからぬ話ですが、アンリアルな感じが好きじゃなくてスタンダードな感じがお好きな方は甲次郎がいいんじゃないでしょうかねえ。一部完結になってるけれど二部はあるのかなあ。個人的には洪庵のその後が読みたいけど。