新 お気楽日記

日常を徒然なるままに。

青い文学 こころ

なんで普通に2週にわたる前後編にしないで一日でスペシャル状態なのさ?と思った謎が、見たらスッキリ晴れました。なるほど〜これは上手い作りだ!
さすがの私でも原作をよく知っている(笑)「こころ」。あれだけのお話をどうやってまとめるんだろー?っていうのは誰でも思うことだろうとは思いますが、個人的には上手いことやったなあ〜という気がします。いわゆる、原作に準じるわけでもなく、ぶちこわすわけでもなく…こういうのを「原作モノ」と呼ぶんだろう…と思いますねえ。
原作の骨子を壊さずに、世界観を広げて新たな解釈を注入する…と。ベツ物なんだけど、まったくのベツモノではないし、バッタモンでもないという。


さてさて、ほんだらこんだらで、ストーリー的にはものすごい掻い摘んだモンに仕上がってますが、それをスタンダードな先生視点と、K視点で見せたところはふむーなるほどーと。同じセリフであっても、同じ展開であっても、視点が変わると人間の「こころ」って違って感じられるものなのねえ…と。よく「相手の立場に立って考えなさい」なんて言われるけれども、相手の立場にたって物事を考えるなんていうことは本当はものすごく難しいことなんですよねえ。それをとっても端的に示された気がして、やっぱりちょっと胸が苦しくなるお話になっておりました。ものごとを単一の側面から見てしまっては真実は見えないよ…というような、大きくて曖昧だけれども大切なテーマが根底に流れておりましたねえ。


面白いのは季節も夏と冬に切り替えているところ。ストーリーにふさわしい季節というのがある…とまでは言わないけれども、ポジとネガというのかなあ…そういうあらゆるものの2面性とか裏表とか、そういうのを感じることができて、ふむ…1時間を2つの話に分けた理由がよくわかる面白いツクリでした。


堺さんはと言えば、これが見事にその夏と冬のストーリーの違いを表現していて、もはや「これが堺さんの声だだ〜」と意識することもないまま見終わってしまったという(笑)。温かさや揺れる心をニュアンス的に押し出している夏の先生=堺さんと、クールで感情の見えにくい冬の先生=堺さんと…。まぎれもない同じ人物なのに、まったく違う人物にも思えるという。お見事どす♪


何気にこの後先生がどうなったか…という原作にある部分があえてカットされているところもいいんじゃないかなあ。これ見て「原作読んでみようか」と思った人は、読んでまたびっくらこいたりすると思うんですよ。で、「読んで良かった」と思えるんじゃないかと。アニメをきっかけに本を読ませる…という狙いが作り手にあるかどうかは知らないけれども、そういう効果は十分あるんじゃないかなー。


さて、こっから先は蛇足ですが、前回の「桜の森〜」の原作もまったく別の意味で興味を持って(笑)読んでみました。





こんなアニメを見て「原作読んでみよう」と思うこと自体が悔しいっす…と思ったんですけど、それはそれで大人げないし(笑)、家に全集があるんだから読んでもバチあたらんだろうと(あるなら文句垂れてないでさっさと読めって話ですけどねえ)自分に言い訳しつつ。まあつまりなんだ…。



「もやもやしてて気分悪い〜〜〜!」



というような気持ちをどうにかしたく。ひたすらスッキリしたくて読んだんですが。読み終わって「なるほどねえ」と小さくため息が出た次第。非常に観念的な話なのであろう…というのは予測できたことなのだけど、でも原作は観念的でありながらもっと寓話的というか。もちろんその風刺的な部分は原作では見事に行間に収められてしまっていて、感じたくない人はサラっと感じないように読み飛ばすことも可能で、感じたい人はぐぐっと深く考え込むことも可能という、だから名作なんだなあ〜と思える感じなのですが。そこんところのものすごく難しい匙加減の原作なのですねえ。それに対して、アニメが何故ああいう結論を出したのかは知る由もないんだけど、そこの振り幅というか咀嚼の仕方が私とはまるで方向性が合わなかった…ということなんだなーと酷く納得しました。
原作の行間で何が語られているのかというのは、受け手によって著しく違うものだろうし、彼女が果たして鬼なのかどうか?というところはそれの最たるもんでなんとも答えが出しにくいものなのだけど。というか、答えが出ないように書いてあるのが原作なわけですよねえ。でもあらゆることに答えがないのだ…というところが答えなのだろうなーと思うと妙に納得がいくんですねえ。なんとなく、桜の下で一人で座り込んでみたら答えのひとつも見つかりそうな気がする…というのがもしかしたら繁丸の気持ちだったのかもしれないけれども、答えを出してしまうのはとても恐ろしいことなのかもしれません。
というわけで、モヤモヤはどんどん深くなるばかりですが、モヤモヤするのが目的の原作だと思えば、それは実はスッキリなわけで。気分よくモヤモヤできる原作でした。
とりあえずアニメについては「独自解釈や観念的な部分に対する答え」を出さなかったのか出せなかったのか知らないけど、もうチャチャでも入れてふくらまさないと2話分に話がまとまらなかったんだろう…と勝手に乱暴な推測をして忘れることに(笑)。いや、でも、インパクト強かったからなかなか脳裏に焼き付いてて離れないんだけど(笑)。
一番皮肉だよなあと思うのは、アニメを1時間近くかけて見るよりも、原作を読むほうが時間がかかんなくてわかりやすいというところでした(笑)。