新 お気楽日記

日常を徒然なるままに。

家づくりという作業:その1

真面目な話をたまにはしてみたいと。
こうやってブログに家のことを書いてみると、自分はあんまり家に拘りがないのではないか?と思い始めます。まったくないわけじゃないんですよ。でもなんというか餅は餅屋と言うじゃないですか。お任せしてみたい気持ちがちょっと出てくる。

どうしても「これだけは嫌」っていうのは確かにあるんです。例えば私の場合、南仏プロバンス風のオレンジ色の瓦を進められたら一瞬で死ぬ(笑)。
でも大筋間取りが我が家の家族構成とライフスタイルの条件を満たしていて、インテリア的なものがそこそこ好みに合致していればそれでいいような気がしてきます。少々使いにくい場所とかあっても、その方が楽しかったり面白かったり、建てた後の楽しみってのがありますよね。家を育てるような。変なところもそのまま愛してしまえ!って感じ。
子供の頃運良く自分の部屋をもらえたとき、あれこれそこを弄るのが楽しかった覚えがあります。机やベッドの配置、そこに小さな棚を自分で作ったり、カーテンやベッドカバーを自分で縫ったり、カーテンレールの付け替えなんかも自力でやって。例の学習机(それでも当時はシンプルな部類だった)も、自ら解体して本棚と天板を分けて使ったり。まあそれの大掛かりバージョンを今やっていると思えばそれはそれで楽しい作業なんですが、こんだけお金掛けてやってしまうともう後で「弄れない」って感じがしちゃいます。それを壊すのって勇気要りそうだもん(笑)。

傷ひとつない新品の我が家はきっと気持ちがいいだろうし、スイッチの形状からタオルバーの位置まで拘りぬいてコーディネートした家はきっとモデルハウスのように素敵に違いない。でもじゃあモデルハウスに住みたいのか?って言ったら、そんなこと思ったこともない自分。なんか違う…と途中で思い始めました。

やっぱり家は器だと思う。せっかく建てるのだから部屋数や間取り、最初にやっておかないとどうにもならないような部分はキッチリしておこうとは思うけど、細かいところはこの際どーでもいいような気がしちゃう。「こんな感じ」ってイメージ伝えて、あとはプロにお任せします♪でもいいような気さえするんですよ。逆に「プロの腕を見せてちょうだい」というぐらいの気持ち。設計さんもインテリアさんもクリエイティブな仕事をしている方ですもん。私なんかよりたくさんの経験とノウハウと、想像力を持っているのだから、その引き出しを存分に使って欲しいなあという気持ちになるんです。その方が絶対面白いもんができるんじゃないかと。


自分も畑は違いますが、仕事でクライアントの要望に沿った文を書くとか、企画を作るとかやるんですが、大まかなコンセプトや絶対譲れない意向だけを伝えてきて「あとはプロの腕を見せてくれ」と言われると俄然やる気がでるもんです。「ああ試されてるな」と感じたり、それこそ相手の要望の根底にあるものが何なのかを必死に理解してどうにかしようと思います。練って練って、相手が「さすが!あなたに頼んで良かったよ」と言うようなものを出してやろうと120%の力を振り絞ります。勿論独り善がりになりすぎてもいけない。あくまでクライアントが満足する何かを出さなくちゃいけない。だけど私じゃないとできない何か。
でも一から十まで、それこそ句読点の位置にまで注文をつけたり、自分で書き直してきてしまうようなクライアントだと「好きにすればいいじゃん」とテンションが下がる(笑)。そういうクライアントの方が本当は楽なんですけどね、プライドやオリジナリティを捨てて「はい言うとおりにやりましたよ。これがあなたの望んだものでしょ」と突き出すまでです。その出来上がったものが本当に良いものかどうかなんて、どうでもよくなります。


で、話を戻す。
毎週のように何時間も会話を交わしていると、彼の設計に対する姿勢が見えてくる。彼はクライアントの言うなりの家を建てようとはしていない。あくまで企業人らしくマニュアルに沿って展開しつつも、要所要所で彼の個性がぐわっと出てくるんですね。でもって彼の設計したモデルハウスを見ていると「あ、この人らしい拘りだな」と思える部分がそこかしこにあるのがわかる。それくらいの関係にはなっているってことですが、これが案外大事そうな気がします。

彼を知れば知るほど「Åさんならどうします?」という意見を聞きたくなってくる。当初あまり自分のオリジナリティを出そうとせず、様子見っぽかったÅ氏ですが、こちらのスタンスも多少理解してくださったようで最近では色々と意見を出してくれて面白いです。無論「それはやり過ぎ!元に戻してくださ〜い」っていうこともシバシバなんですが(笑)、そこはそれ互いに大人ですし、彼もプロなので施主の本気の要望には別の形で応えようとしてくれます。まさしくプロの腕をみせたる!ってところでしょうか…。プロ魂に火をつけるのも大事なことかもしれません。勿論それは無理難題を押し付けるというのとはまったく別の次元ですけれども。その気にさせて、やる気を出させて、面白い結果を導き出す!ってこれ子育てみたい…(笑)。

そういう中から出てきたサプライズのいくつかはやっぱり楽しいし、「ああこの人にやってもらってよかった」と思える瞬間です(まだ着工してないのにさ)。「え〜そこにそんなことするかなあ?」っていうことも実はいくつかありますが、我が家では「わかんないけど面白そうじゃん」という理由で黙って採用にした部分がいくつかあります。彼が一生懸命プレゼンする姿を見て「ふむ。それに賭けてみようかのう」という気持ちになるんですね。勿論出来上がったものが私たちの思っていた姿と違っていたとしても文句は絶対言いません。宝くじみたいなもんです。宝くじ、外れて文句言う人いませんよね。

その宝くじが当たっても外れても、我が家は「ああ面白かった。あの人にやってもらって楽しかったねえ」と言える結末を求めているのです。普通こういう考え方の場合はデザイナーさんにお願いするのが良いのだと思いますが、奇をてらったものが嫌いな私たちにはそういう発想はありませんでした。逆に言えばデザイナーさんにお願いするほどの無理難題もないのです。

ごく普通(にちょっと本が多い)ぐらいの4人家族の家。なのにどっか面白い…家。10年経ったときに「古くなったな」じゃなくて「味が出てきたな」と思える家がいいなと思ってます。

「あんまりこちらに寄り掛かられても困りますよ。あくまで施主さんが決めてくださらないと」と、生真面目なÅ型設計Å氏は冗談めかしつつ企業人ぶってますが(笑)、結構楽しんでくれているんじゃないかと勝手に思ってる施主です。先日インテリア担当さんにちらりと聞いちゃいました「Åが凄いノリノリなんです」ですって。嬉しいじゃないですか、企業人がお給料の中でノリノリになってくれるなんて。

10年経って味の出る家…トライしてみましょうぞ…。せっかくとんでもなく高い買い物をするんですもの。素人考えであちこち口出ししたってしょうがないです。小姑みたいじゃん…それじゃ(笑)。と言うとちょっとかっこよさげですが、まあ細かいことをいちいち考えるのが面倒くさいという性格でもあるんですねぇ。最近夫が二言目には言います。「もう残りは任せるから明日から着工しちゃって…とっとと建てちゃって…って気分だよ」と。

ああ言ってませんでしたねえ、我が家のナイショのコンセプトは「年寄りが引っ越してきたのか?と勘違いされるような家」です。ちょっと夫婦揃って年寄りっぽいんです。