新 お気楽日記

日常を徒然なるままに。

HAZARD感想

退屈な日本を飛び出した大学生シン(オダギリジョー)がニューヨークで一体何を見て、何をしたか?

学生の頃など、多分誰もが一度や二度は意味もなくイライラしたり、世の中に当り散らしたりしたと思うのですがねえ。でも実際にそこをぶち破って動く人は少ないでしょう。まさにそういう生温い日常に満たされなくて「何か」を探して飛び立ったシン。HAZARDを求めてニューヨークへ行ったはいいものの、彼の求めていたHAZARDとは本当にこんなものだったのか?と。
深く考えれば深くも考えられるし、さらっと流そうと思えばさらっと流せる。なかなか小気味良いストーリーでした。

以下感想文。


現地で出会ったリー(ジェイ・ウエスト)とタケダ(深水元基)に引き摺られ、惹きつけられて過ごすシン。キケンを求めてきたはずなのに、彼らの日常に驚きびびりまくり、流されている…(ように見えた)。本当に日本から学生が行ったらこんな感じになるんだろうな〜と、どんなにいきがっている若者でもきっとこんなふうに「え?え?え?」って気後れするんだろうなあって、ある種とってもリアル。そしてびびりながらも、かちりと鍵がはずれたようにその羽を伸ばし、羽ばたこうとするのだろうなあと…。かっこ悪く必死なシンの姿がリアルに思えてかっこいい。

結局彼が手に入れたHAZARDは一時のスリルでしかなかったのか? 最終的にもっともHAZARDな存在になったのは彼自身なんじゃないか?お尻の青いシンが、仲間である二人を失ったとき、危険は怒りの感情から生まれてくるものなのかもしれないと思ったけど。でもこれが本当のHAZARDかどうかはわからない。でもそれが人を思う気持ちと表裏一体であることだけはよくわかった。

なんて言っていると小難しくてわけわかんない映画っぽく思えるけど、全然そんなことなかったですね。
すごくバランスが良かったと思う。すごく現実的だったんじゃないかなと。危険すぎてどきどきしてしまうこともなかったし、彼らがワル過ぎてむかむかすることもなかったし、かといって物足りなくていらいらすることもなかったし、観る側(私だけかもしれないけど)のストレスにならないぎりぎりの危なさと穏やかさと楽しさが混ざってて面白かった!

なんというか、とりあえずオダギリの青さがシンの青さとシンクロしてて、彼のあの風貌とか役者として発展途上な感じとかが寧ろぴったりで。4年越しというのは案外功を奏しているのではないかとすら…。さあ4年後のシンがどうなっているかはわからないけど。でもオダギリを観ていると、シンもきっと天邪鬼なことを言ったり、無茶苦茶な格好してみたり、真摯に頑張ったり、迷ったりしながら今のオダギリみたいになってんじゃないのかなあ?と思うわけです。
そう思うとね、これは普通に観ても勿論面白いけど、オダギリファンが見たらもっと面白いだろうと思うわけ。私みたいな昨日今日のファンじゃなく、4年以上前からファンの人はさらに面白いだろうと。

何しろジョン・ウエスト氏が物凄い勢いで映画を引っ張っているから、そこに引っ張られて右往左往必死になっている姿がもう微笑ましいぐらいで(笑)。
園監督はオダギリの魅力を物凄くよく知っている人なんでしょうね。1シーン1シーン、1カット1カットがいちいちかっこいいんですよっ!服装とかはもちろん、ごみの山の上に座っているだけでとてもキレイ。敗れた傘を手にしているだけですごく美しい。すごくちっぽけでね。等身大のカッコよさというか、過大評価もなければ過小評価もないカッコよさに思えました。
何気に私のお気に入りはウォン(池内博之)。彼らと普通の日常の間ぐらいにいる人で。別にいい人でもないんだけど、悪い人ってわけでもないような。でも彼らとちゃんと繋がっているところにいて。そこもまた現実感のあるところ。下駄履いて立ってるだけでかっこいいんだよ、池内くん(笑)。彼はやっぱり目の力があってねえ、素敵でした。
シンを向こう側へ行かせなかったのはウォンの存在なんでしょうかね。「東京へ行く」というキーワードが彼の口から出てくると意外とどきっとします。彼にとっての東京は、シンにとってのニューヨークだったのかなあ。それとも「お前のいるべき場所」を暗示していたのか。

ともかく何も考えてなさそうなやんちゃな男の子たちが、実はすごく苦しんでいて、すごく頑張っていて、すごく悩んでいて、すごく脆くて、すごく強くて、すごく危険!というのが画面からすごい圧力で伝わってくる映画。
男の子っていいなあって…ちょこっと登場する女の子たちを見ていてそう思いました。女の子は早く大人になっちゃうよね」。なかなか大人になれない男の子がちょっと羨ましくなるような…そんな雰囲気の漂う映画でした。